月経は視床下部-下垂体-卵巣系にかかわる多因子による内分泌調節機構
および子宮内膜の周期的変化により発来し、正常な流出路を経て月経と認識されます。
これら各部位の傷害により月経異常が生じます。
月経の異常には
①無月経 ②月経周期の異常 ③月経の持続日数の異常および量の異常
④初経に関する異常 ⑤閉経に関する異常 ⑥月経随伴症状の異常
等があります。
【月経随伴症状の異常】
○月経前緊張症
月経開始の数日前から始まる精神的,身体的症状で月経とともに減退、
消失するものを月経前緊張症といいます。
[病態]
内分泌系機能の異常が関係していると考えられていますが、
月経前緊張症の婦人には神経症的性格が多いことも知られています。
[症状]
乳房緊満,悪心,嘔吐,下腹部膨満,頭痛,めまい,耳鳴り,全身倦怠,不安,いらいら等
症状は多彩です。
○月経困難症
月経に伴う下腹部の不快感下腹部痛腰痛が治療を要するほど強い場合を
月経困難症といいます。
[病態]
月経困難症の疼痛は子宮収縮により生じると考えられています。
[症状]
下腹部痛が背部や大腿部に放散し、消化器症状,精神神経症状などを
伴うこともあります。これらの症状は月経開始の数時間前から開始時に始まり
数時間から数日持続します。
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東洋医学的には・・・
月経異常には、月経周期の異常,経血量の異常,月経持続期間の異常,月経随伴症状の
異常などがあります。特に月経周期の異常に重点を置き、その他の異常を関連させ
病態を把握します。経血量の異常だけでなく、経血の色や質の変化にも注意を払います。
月経周期が異常に短縮するものを経早あるいは月経先期といい
月経周期が異常に長くなるものを経遅あるいは月経後期といいます。
また、月経周期が不定期なものを経乱といいます。
Ⅰ.経早
① 実熱による経早
陽盛体質の人などは体内に熱が生じやすく、また辛いものなどの偏食により内熱が生じることがあり、
この熱が血分に影響して経早が起こる。
随伴症状の特徴としては心煩,口乾,便秘などを伴うことが多い。
② 鬱熱による経早
情志の抑鬱が肝鬱となり、それが改善されなければ熱化または火化し、
この火熱が血分に影響して経早が起こる。
随伴症状として乳房・脇胸部・小腹部の脹痛,イライラ,易怒(怒りっぽい)などを伴いやすい。
③ 虚熱による経早
慢性疾患などにより陰虚となり、そのため虚熱が生じて血分に影響して経早が起こる。
随伴症状の特徴としては五心煩熱(両側の手のひら・足の裏および胸中に熱感がある),
盗汗(寝汗)などを伴いやすい。
④ 気虚による経早
飲食不節や労倦などにより脾を損傷し、そのために脾の統血機能が低下すると経早が起こる。
全身倦怠感,息切れ,心悸腹部の下垂感などを伴いやすい。
Ⅱ. 経遅
① 寒邪による経遅
月経期や産後に風寒の外邪を受けたり、生ものや冷たいものを好んで飲食すると、
寒邪が衝任脈を犯すことがあり、これにより血が凝滞し、経行が阻止されると経遅が起こる。
小腹部の絞痛,四肢の冷えなどを伴いやすい。
② 肝鬱による経遅
情志の抑鬱により肝気の疏泄が悪くなり、それが長期にわたって改善しないと気滞血瘀を
形成することがあり、これにより経行が悪くなると経遅が起こる。
精神抑鬱,小腹部の脹痛,胸脇痛などを伴いやすい。
③ 血虚による経遅
病後,慢性出血,または脾胃虚弱のために血の生成が不足すると、衝任脈で血が充足せずに経遅が起こる。
随伴症状として腹部・腰部の隠痛み,四肢の冷え,寒がりなどの症状を伴いやすい。
Ⅲ. 経乱
① 肝鬱による経乱
肝は蔵血,疏泄機能により血の輸送量や運行を調節していますが、抑鬱や激怒することにより
肝のこれらの機能が失調すると経乱が起こる。
一般には肝気の疏泄が過度になると経早、疏泄が弱くなると経遅となる。
このような疏泄の失調により経乱が起こる。
乳房や小腹部の脹痛などを伴い、月経が来潮すれば痛みは軽減する特徴がある。
② 腎虚による経乱
先天的な腎気不足、または房事や出産過多などにより陰血に対する調節機能が失調すると
経乱となる。随伴症状として耳鳴りやめまい,腰のだるさなどを伴う。
参考文献:
『東洋医学臨床論』 医道の日本社