めまいにはぐるぐる回る運動性感覚を伴うもの(回転性めまい)と、
眼前が暗くなる,ふらふらする,またはゆれる浮動性感覚(めまい感)
のものがあります。回転性のものは内耳や小脳に急激な変化が
起きた場合に発症し、浮動性の時は病変が徐々に進行するものや、
変性疾患に多くみられます。
運動感を伴わないめまい感で、持続時間が長いもの、
または、手足のしびれ、複視、嚥下障害などの神経症状を
伴うもの(中枢神経系の障害)、回転性のめまいで、起立・歩行
などに明らかな平衡障害があるものには注意が必要です。
[病態]
身体の平衡を保つためには、眼,内耳や各深部知覚からの情報が
中枢でうまく統合される必要がある。
この系統に障害が起きると平衡感覚がくずれてめまいが生じる。
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東洋医学的には・・・・
目がかすんで目の前が暗くなるのを「眩」といい、
ぐるぐる物がまわってみえたり、物が揺れ動いてみえるものを「暈」といいます。
この2つは同時に起こるので、「眩暈」と称しています。
目がかすんで頭がくらくらするものを「目眩」、
ひどく頭がくらくらし、目の前が暗くなるものを「眩冒」といいます。
① 肝陽の亢進による眩暈
怒りやストレスなどにより肝の疏泄作用が失調すると肝鬱の状態が起こる。
それが改善しないと熱化して肝陰を損傷するようになる。
そのために肝陽が亢進し、頭目に影響すると眩暈が起こる。
また、房事過多などにより腎陰が不足すると肝陰も次第に不足し、
そのために肝陽が亢進し眩暈が起こる。
② 痰濁による眩暈
飲食不節や労倦などにより脾胃を損傷すると、運化機能が低下して湿痰が生じる。
この湿痰が中焦に阻滞しているために清陽が頭部に昇らず、
また濁陰が降りないと眩暈が起こる。
※ 清陽 体内の軽く清い陽気を清陽といいます。
濁陰 清陽に相対するもので重く濁る物質のことをいいます。
③ 気血両虚による眩暈
脾胃虚弱のために気血の生成が悪くなると、気虚のために清陽が頭部にうまく到達
できなくなり、また血虚のために脳をうまく栄養できなくなって眩暈が起こる。
慢性疾患により気血を消耗したり、吐血、下血などにより出血肩になっている者にも
眩暈が起こる。
④ 腎精不足による眩暈
腎に蔵されている精は髄を生じ、脳は「髄の海」といわれ、
先天的に腎精が不足している者、老化や房時過多などにより腎精が不足している者は
髄海不足となり、それにより眩暈が起こる。
【主な病証】
< 気血両虚による眩暈 > (虚症例)
[病態]
脾は気血の生成を主っているが、脾虚のために気血の生成が不足し、
脳をうまく栄養できないと眩暈が起こる。
動くと増強し、疲れると誘発するという特徴がある。
また血虚のために顔面は蒼白、唇や爪甲の血色も淡白になる。
血虚による不眠、心悸、気虚による息切れ等を伴う。
< 肝陽の亢進による眩暈 > (実証例)
[病態]
肝の病理的特徴は、「動」と「昇」である。
肝陽が上昇すると顔面の紅潮が起こる。
特徴としてイライラする、怒りっぽいなどの症状が現れる。
肝陽が動じて心に影響すると不眠、多夢が起こる。
肝腎の陰虚により肝陽が亢進するものは、陰虚症状として
手足、胸中の熱感、寝汗、腰膝がだるく力が入らない等の
症状を伴いやすい。
肝陽の亢進を抑え、腎陰を補うことが重要になる。